ケイヤク結婚

「日曜の夜も仕事とは。御苦労なことだな。いや、可哀想と言うべきかな？」

　今、一番会いたくない人間が、ドアにところに立ってほくそ笑んでいた。

「新垣、そういうお前だって仕事場にいるじゃないか」

「俺はただ、ちょっと面白い情報を耳にしてね。完璧主義者の夏木課長が、明日の会議の書類を全部パーにしてしまった…とね。真意を確かめに、デートの帰りにちょっと寄ってみただけだ。本当にアクセク、書類を作っているとはな」

「そんな冗談を言うのは、どこの誰だか知らないが。全くのデマだな、それは。俺は明日の会議とは関係ない書類を書いている」

「まあ、明日になればわかることだな」

「そうだ」

「俺は早く帰って、明日の会議のために体力を温存しておくよ。どうせ、俺の案が通るのは確実だがな。書類が無いんじゃ、勝負にもならねえな」

「言ってろ」

　あはは、と大笑いをしながら新垣が立ち去っていった。