ケイヤク結婚
 すでに勝者のような余裕の背中を見せつけられて、俺はむっとする。

 まだ明日にもなっていないというのに、勝った気でいられるのは癪にさわる。

 絶対に明日までに、終わらせてやる。

「課長……本当に、申し訳ありませんでした」

 俺のデスクに駆け寄った寺岡が、深々と頭をさげてきた。

 今にも泣きそうな顔言う寺岡に、俺は苦笑した。

 男が簡単に涙を流すな。

「だから謝るなって言ってるだろ」

「なんだか僕、負けたくないって気になってきた」

 幸介が腕まくりをして、気合いを入れる。新垣の登場に、幸介のやる気を起こさせたようだ。

 俺もパソコンに目を戻すと、書類制作に集中した。

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