ケイヤク結婚
「ええ。構いませんよ。入籍したのに、別々に暮らしているのはおかしいでしょ。それに家は広いので、互いの部屋を別室にすれば、プライバシーを侵したりはしないはずです。もし本気で好きな人が出来て、結婚をしたいと思ったら、正直に話をしてください。いつでも離婚する覚悟はできてますから」

「あ…はい」と私は頷き、「わ、私もっ。言ってください。好きな人が出来たら、私も離婚しますから」と慌てて付け加えた。

 大輝さんが、クスリと笑い、「有り得ないと思いますが、心に留めておきます」と答えた。

 有り得なくないよ! 大輝さんは格好良いし、これから先、どんどんと恋愛のチャンスに恵まれると思う。

 私みたいに、過去の恋愛に縛られて、すっかり心が捻くれて……。次の恋愛に踏み込めず、ついつい男性の浮気ばかりを考えてしまう私とは違うモノ。

 私こそ、好きな人ができるなんて有り得ない話。

 侑との恋愛を通じて、私は……男性を信じられなくなってしまったから。

 理沙ちゃんは私が純粋な女性だと思っているみたいだけど。違うよ。

< 60 / 115 >

この作品をシェア

pagetop