君のための嘘
「どうかしたのかい?」


「えっ? な、なんでもない。お腹空いちゃった。手を洗ってくるね」


リビングを出て行く夏帆の後姿をラルフは探るように眉を寄せ見ていた。


車から降りたところを見られていたのか?


夏帆ちゃんの様子……彼女はすぐに表情に出るからわかりやすい。


おそらく見られていたのだろう。


うかつだった……。


正体を明かさなければならないのだろうか……。


ラルフは踵を返し、着替える為に自室へ向かった。




私服に着替え、キッチンに行くと夏帆が味噌汁を温めていた。


「あ、もう温まったからね?」


夏帆は先ほどの表情とは打って変わってにっこり笑っている。



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