君のための嘘
ラルフは再び気持ち良さそうに眠る夏帆を見る。


僕が君に惹かれていると知ったら、どんな反応をされてしまうのだろうか。


もうすぐ僕の正体を明かさなければならないだろう。


……夏帆ちゃんは聞きたいのを我慢しているようだ。


聞かないのは、僕たちの関係を崩したくないからに違いない。


この関係は長くは続かないんだ……夏帆ちゃん……。


胸からふつふつと夏帆への愛しい想いが溢れ出て、この想いを抑えきれなくなりそうだった。


この旅行は失敗だったかもしれない。


「くそっ!」


小さく自分をののしる。


乱暴な言葉とは反対に、ラルフはそっと上体を起こすと、夏帆の唇に唇を重ねた。


すぐに唇を離し、まるで思春期のガキのような自分の行動に口元を歪める。


心の中の葛藤が激しくなると、ラルフの心臓が不規則に暴れ始め痛みを覚えた。


夏帆ちゃんといると、心臓に悪いな……。


ラルフは再び座席の背もたれに背中を着けると、目を閉じた。


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