君のための嘘
夏帆が目覚めたのは分娩後、半日が経ってからだった。


一瞬、自分が今まで何をしていたか覚えていなかった。


私……。


「夏帆ちゃん」


夏帆はビクッと肩を震わせた。


そして、声のする方へ顔を動かす。


「ラルフ……」


会いたかった愛しいブラウンの瞳とぶつかると、夏帆はベッドの上に飛び起きた。


その途端、下腹部が痛み、顔が歪む。


点滴の針が刺さっている手が腹部を抑える。


「そんなに急に動いてはダメだよ」


痛みを堪える夏帆にラルフはたしなめる。


そして数か月前を変わらない笑みを夏帆に向ける。


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