【十の瞳】
ふと目を開けると、傍らの椅子に腰かけた彼は、うつらうつらと、船をこいでいた。
目元には、濃いクマができている。
もしかしたら、この数日あまり眠れていないのかもしれない。
彼はこのツアー中、ずっと誰かに気を遣っているようだった。
困っている人間がいれば、それとなく理由を尋ね、作業に必要なら迷わず手を貸す。
食事の支度だってしたと聞いた。
皆がいがみ合えば、進んで仲裁に入る。
でも、それは完璧な人間のすることではない。
彼だって無理をしているのだ。
彼の精神は疲弊しているに違いない。
そんなコロに対して、十二愛は今まで誰にも感じたことのない思いが込み上げてくるのを理解した。
――だが、皮肉にも彼女は、「名探偵」なのだった。