【十の瞳】



「……私、人前に出るの、苦手なの」
 

十二愛は、ベッドに体操座りになり、膝に頭をつけ、項垂れていた。


ふわりとボリュームのあるスカートが広がり、下着が見えそうだとかいう下世話な心配はいらなかった。
 

僕は机とベッドの間にある椅子に腰かけ、彼女の話に耳を傾けていた。


「苦手? そんなに可愛いのに……」


「この格好だから、辛うじて、出られるの……。


私は、他の人が、怖いんだ……」
 

ぐすん、ぐすん……。
 

十二愛は、小さな子供のように、泣きじゃくっていた。
 

嘘泣きの類なんかじゃない。


時々、心配そうにこちらをちらりと窺う際に、真赤な目が見えた。
 

「じゃあ、何でこのミステリーツアーに応募したの……?」


「だって……こんな事、一生に一度、あるかないかの機会だよ!? 


【管理人】――【マスター】に、会えるんだとしたら、多少、我慢したって……!」
 


俯いたまま、興奮気味に話す十二愛――しかし、彼女の肩はずっと震えていた。






皮肉な事に、『紡ぎ車』が誇る『名探偵』は、臆病者であった。
 

だが、僕はそれを悪い事だとは思わなかった。



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