【十の瞳】
彼女が舌打ちして背を向けた時、
「あ~あ~、コロちゃんは良い子ですねぇ~、こいつぅ……!」
「どわっ……!」
突如として、ファニーペインが首に腕を回して、顔を寄せて来た。
いきなりプロレスごっこが始まった。
「付き合っちまえよ~お前らよぉーっ!」
ふざけているのは分かるが、結構苦しい。
慌てて、彼の腕を指で小刻みに叩く。
『参った』の合図だ。
「げほっ……ギブギブギブ……!」
「あはははは!」
ファニーペインが笑っていた。
僕も笑っていた。
それを、やっと洋食用の大皿を見付けてきた蝶子が、
相変わらず何を考えているのか分からない顔で、ぼんやりと見つめていた。