【十の瞳】
死体は今、それぞれ冷房を利かせた部屋の中にある。
だけど、腐敗を完全に食い止めるには、冷凍するしかない。
そんな事が出来るのは、厨房にある冷凍庫だけだ。
だが、中には当然のことながら、食材が納められている。
そこに死体を安置すると言い出せる人間はいなかった。
僕だって嫌だ。
協議の結果、死体は一階の隅にある――劇団員が泊まるはずだった部屋に、移動する事になった。
この移動の目的は、単に死体を自分達から遠ざける事だけらしい。
台所や倉庫を漁って、ゴミ袋とガムテープと軍手を持ってきた。
欲を言えばマスクでもあればよかったのだが、そこまではさすがに見付からなかった。
――僕達は、まず平三郎の部屋に転がる、彼の手足を回収した。
生命活動を終えた手足は、死後硬直も解け土気色で、ぐにゃりだらりと重たかった。