【十の瞳】
物体。
かつて、これが体の一部だったとは信じられないくらい滑稽な――
これはもう、ただの『物』だ。
指先を使って、なるべく断面を見ないようにしながら、何重にもした袋の中に、体を納める。
「だらしのない男……」
ふと、蝶子がそんな事を呟いた。
「あ?」
ファニーペインが反応する。
蝶子が続ける。
「そういう、マザーグースの詩、あったわよね」
ファニーペインが首を傾げる。
彼は知らないようだったが、僕とえどがぁさんは、ああ、と頷いた。
【一人の男が死んだのさ。
とってもだらしのない男
お墓に入れてやろうにも、どこにも指が見あたらぬ
頭はごろりとベッドの下に、手足はバラバラ部屋中に
散らかしっぱなし、出しっぱなし】