【十の瞳】
「……この場合、見付からないのは頭だけだけど……」
僕が言うと蝶子が、
「胴だけ、マスターの部屋にあったんだもんね……」
袋の口を縛って、ガムテープで厳重に塞ぐ。
下の階まで運ぶのは、えどがぁさんの役目だった。
彼は死体に触っていなかったからだ。
こうなった以上、作業は分担するのが暗黙の了解になりつつあったので、袋の端を彼に預け、もう一端を仕方なく僕が掴んだ。
よく見ると、えどがぁさんの顔色が悪い。
今にも吐きそうだ。
しかも考えてみれば、朝食兼昼食を摂ってから、一時間ほどしか経っていない。
もう少し時間を開ければよかったのかもしれないが、もう遅い。
数秒、息をのんで彼を見守る……。
えどがぁさんは苦しそうに肩を上下させ――
やがて、彼のなけなしの抵抗が生理現象に勝ったのか、どうにか嘔吐には至らなかった。