【十の瞳】



……昨日、藤浦さんの一番近くにいたのは、えどがぁさんだった。


しかし、彼は藤浦さんを助けるどころか、


飛び降りかねないくらいに身を乗り出しているファニーペインにすら、触れようとしなかった。
 


――出来ないのではないか?



皆が騒然となってる時に、僕は口を開いた。


「えどがぁさん……あなた、もしかして【接触恐怖症】なんですか……?」
 

彼は、はっとなった。


「何それ」
 

ファニーペインが問う。



「高い場所が訳も無く怖い【高所恐怖症】みたいに、


人に触れられるのが極端に苦手――あるいは、病的に嫌悪する精神症状……、


で合ってますか?」



「ああ、こんな年になって、本当に情けないとは思うんだが……」


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