リアル



空き家の前で若い女性の他殺死体。


これが珍しいのかそうではないのかの判断は難しい。


今の日本は様々な犯罪が行き交い、殺人という犯罪も、死体遺棄も、さして珍しいものではない。


何かしら事件が起きる度に、警察達は右往左往するのだ。


「第一発見者は?」


「犬の散歩中の老婦人という、有りがちな設定です。あそこ、人通りすくないんだな。いつ棄てられたかは分からないがな」


生野はコンビニの緑色の看板を目に映しながら言った。


発見時刻は昼前の十一時。


仮に夜中に棄てたとしても、見付かるのは遅い。


だが、発見直前に棄てたとしたなら、誰かに見られている可能性は十分にある。


どちらにしても、人通りが少なくなければ、とっくに何かしらの通報があるはずだ。


「一歩中には入ってるせいもあるかもしれないけど、まあ、人通りは少いんじゃない?」


薫は身震いしながら答えた。


「じゃ、ここで」


生野はそれだけ言い、コンビニの中に吸い寄せられるように入って言った。






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