リアル
この部屋に調理器具などが揃っていないのは、隆が料理をしないからというのも勿論あるが、引っ越す時に楽なようにという別の理由もある。
隆は定期的に住む場所も仕事も変えているので、荷物は出来るだけ少ない方がいいのだ。
そのほうが荷物を整理する時に楽だし、何よりも引っ越し料金も安くなる。
なので、これだけ大量に電化製品やら皿やらを買い込まれると正直困るのだ。
でも、それは生野優しさからくる行動なので、感謝はすれど文句を言うことではない。
「いただきます」
生野は隆の向かいに座り、声を出した。
丁寧に緑茶まで淹れられている。
「いただきます」
隆もそう言い、箸に手を伸ばした。
生野が作った料理はどれも本当に旨そうだ。
隆は手料理と呼べるものを食べるのはこれで二度目だった。
施設や学校も集団の食事の為、手料理とは言い難い。
この間と今日。
どちらも生野ではあるが、人の手料理というのは特別に旨いものだ。
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