リアル
京華は憂鬱な気分で窓の外を眺めた。
当たり前だが生野からの連絡するはない。
「また浮かない顔だね」
目の前には裕児の顔がある。
「早く事件が解決すればいいのに、て」
京華は苦笑いで本心を隠した。
本当は事件の解決や犯人が捕まるかどうかなど、どうでもいい。
それに生野が掛かりきりで会えないことが嫌なのだ。
そして、あの人に会っていることが。
事件が起きなければ生野があの人と会うことはないのかもしれない。
いや、それでも生野は会うのだろうか。
以前の恋人である雪穂薫に。
「鬱憤がたまってるのかな?」
裕児はくすりと笑った。
「贅沢な悩みなんですかね? 恋人だっているし、仕事だって楽しいし。なのに悩むなんて」
「いや、人間に悩みは尽きないものだよ。端から見たらどんなに恵まれているように見えても、それぞれ悩みはあるわけだしね」
裕児の言葉に京華はほっとした。
この人の言葉は心を安らかにしてくれる。
「そうですよね」
京華はそう言い笑みを漏らした。
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