リアル




「じゃあ、今日も麻酔からしていきますね」


前回と同じ若い男性医師が笑顔で言った。


「あ……はい」


隆の返事を合図に診察台は横に倒された。


すると、美緒の顔が真上に訪れた。


マスクをしていても、多少の顔立ちは分かる。


美人と普通の間だが、どちらかというと美人寄り。


隆は美緒の顔立ちをそう判断した。


そう思えるのはすぐ近くにいる薫の顔立ちが整い過ぎているからだろうか。


医師は隆が何を考えているかも知らずに前回と同じ手順で麻酔をしていった。


ちくりと歯茎を針が刺す感覚は相変わらず慣れない。


どうしても歯医者は苦手だ。


幼い頃に歯医者にかかった経験はあまりない。


記憶が正しければ片手で足りる程度だ。



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