リアル
隆の母親は神経質な女性で、自分の息子が虫歯になるのすら嫌がっていた。
歯も毎日朝晩きちんと磨かせたし、その時はいつも隆の背後に立ち、磨いている様子を監視していた。
そして、何度か検診に連れていかれたのだ。
その時一度だけ小さな虫歯が発見されたのだが、母親は怒るより呆れた表情を見せたのだ。
幼い隆はそれが恐ろしくて、それからは更に念入りに歯を磨いていた。
そして、検診に連れていかれる度に、虫歯がないか怯えたものだ。
呆れた母親の表情はそれほどに恐ろしいものだったのだ。
それ以来、母親が生きている間は虫歯にならなかったし、施設でも歯磨きは五月蝿いほどに言われたので虫歯になることはなかった。
だが、大人になってからはその強制的にさせられていた習慣は抜け、このような事態になったのだ。
それらも重なり、隆は未だに歯医者が苦手だった。
そんなことを考えているうちに、二回目の治療はあっさりと終わった。
身構えていたのと、二回目ということで、幾分楽に感じられたのだろう。
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