リアル



「では、受付でお待ち下さいね」


医師の言葉に隆と薫は同時に立ち上がった。


今日も美緒と接触する機会はなく終わりそうだ。


もう治療が必要な歯はないし、医師も先程通院の必要はないと言っていた。


次は薫が歯の治療でもするのだろうか。


隆がそう考えた矢先、きゃ、という甲高い声が耳に届いた。


何事かと思い声がした方向に顔を向けると、そこには驚いた顔をした美緒がいた。


その目の前には薫がいる。


美緒の白衣の胸元に茶色い染みが広がっていて、目の前の薫の手にはコーヒーのペットボトルが持たれていた。


どうやらキャップが開いていて、美緒とぶつかった拍子に中身が美緒にかかってしまったようだ。


隆は薫がペットボトルを持っていたことなど全く知らなかった。



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