リアル
興味本意で中を覗こうとしているわけではなさそうだ。
中の様子を知りたくて仕方無い、というより、知らなくてはいけない。
そんな空気を纏っている。
薫はそのような人物を過去に数度見たことがあった。
そしてそれは、全員、その事件の犯人だったのだ。
犯人は犯行現場に戻る。
これは捜査の初歩的な知識ではあるが、その確率はかなり高い。
愉快犯にしろ、誤って殺してしまったにしろ、犯人は現場でどのように捜査が行われているのか気になるのだろう。
自分の痕跡を捜すことが出来るか、自分の痕跡を消し忘れていないか。
そういった心理からどうかは、犯罪者になったことのない薫には分からないが、兎も角、可能性は高い、ということだ。
薫は一瞬だけその人物から目を逸らし、現場の方向に目を向けた。
だが、見知った捜査員の姿はない。
生野はまだコンビニからは戻らないだろう。
薫は少しの間考えてから、行動に移した。
それは、その人物に接触する、というものだ。
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