リアル
小田はにやりと笑い、ビルの端に足をかけた。
飛び降りるつもりだと言うのはすぐに分かった。
逃がすものか。
薫が引き金に手を掛けたその時、小田が振り返った。
そして、笑いながら口を開いた。
「思い知らせてやればいい。そう言われたんだ。同じ目に遇っても尚、あんたが同じことを言えるかどうかって」
薫はその言葉を頭で反芻した。
そして、そんな間に小田は自ら身を投げたのだった。
その時の落ちていく小田の背は、今も薫の脳裏に焼き付いて離れない。
結局、自分は二人の人間の命を奪ったのだ。
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