リアル




「俺はさ、両親を殺した奴を見付けたら、必ずこの手で殺すと心に誓っている。それが悪いことだなんて、思ってもない」


隆は言いながら、両の手を薫の前に翳した。


細身の割りに大きな手で、その掌に刻まれた生命線は異様に長い。


「でも、あんたは殺人はいけないと思っている」


隆は手を下げながら薫を見つめ返してきた。


真っ直ぐな瞳だと思ったが、それはすぐに間違いだということに気付いた。


彼は犯人を殺したいわけではない。


そう思わないと、そう誓わないと生きていけなかったのだ。


家族を奪われた幼い少年はそれだけを心に刻んで生きていくことを決めたのだ。


そうでないと、一人で生きていくのは辛すぎるから。


「……俺、後悔してるんだよ」


隆は呟くように言った。


「後悔?」


薫の聞き返しに、隆は小さく頷いた。



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