リアル




「死ねばいい、死んでくれ。何度となくそう思ってた」


そう答える隆の瞳は真っ暗で、容易に足を踏み込んではいけない領域のように思えた。


だが、その闇を知りたいという気持ちもあった。


「本当は、両親が殺されたと理解した時、ほっとした自分がいた。
その時はあまりの恐怖でそんなこと感じてる余裕なんてなかったけどな」


薫は言葉を挟んでもいいものか迷いながら隆の話を聞き続けた。


「俺の両親、どっちも癇癪持ちだったんだよ。挙げ句、母親は極度の神経質で潔癖症。ちょっと飯を溢しただけでぎゃあぎゃあ騒いでた。それを聞いてる父親も煩いって怒鳴り出してた。
毎日、怯えて暮らしてた。
どちらも騒がなければ優しい両親だったし、遊びにも連れていってくれた」


児童虐待。


薫の脳裏にその言葉が浮かんだ。


だが、怒鳴り散らすだけでそうだと断定されるのだろうか。


「だけど、楽しめなかった。いつ怒りだすかいつも不安だった。あまりにキレると手も出た。顔じゃなくて、身体ばかり殴られた。身体には痣が尽きなかったよ」


紛れもなく虐待だ。


目の前の青年は両親殺害だけではない過去も背負っていたのだ。



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