リアル





外の音だけが微かに聞こえてくる。


小さな話し声、遠くの車のエンジン音。


いつの間にか陽は沈み、射し込むオレンジ色の光はなくなっている。


「同じがよかったなあ……」


隆は今にも泣き出しそうな声で言った。


その言葉の真意は薫には分からなかった。


同じ家族を失った同士でも、同じ考えでなければ傷を分かち合い、癒すことが出来ないからか。


同じがよかった。


隆の顔はまた長い髪に隠れて、表情は分からない。


夜の静けさだけが狭い部屋に漂っている。








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