リアル





冬の寒さが増してきたこの時期に自転車を長時間漕ぐのはなかなかきつい。


頬の感覚がなくなるのを感じながらも、薫はペダルを漕ぎ続けた。


もう何年も通っている道は、この時期の夕暮れは薄暗いを通り越して暗い。


きちんとライトを点灯したところで、見えるのは少し先だけだ。


離れたところに人が歩いていても、暗い色合いの服を着られていたら見えない。


薫は前方に注意を払いながら運転した。


パート先を自宅から離れたところにしたのは、あれこれ詮索されたくがない為だった。


以前は自宅近くの歯医者で歯科助手のパートをしていた。


だが、そこにいた他のパート達から、以前は何をしていただとか、結婚はしていないのかだとか散々訊かれたのだ。


それは、今の職場も同じなのだが、唯一違うのは休日にばったり会ったりしないことだ。


以前の職場の時、生野と一緒にいるところを見られ、翌日には質問攻めにあった。


あれは恋人かだとか、何処で知り合ったか、などと訊かれたのだ。


その職場を辞めた理由はそれだけだった。



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