リアル





「予想通り……だな」


生野はにやりと笑った。


まだ犯人に近付いたとは言えない。


だが新しい事実を発見したのは確かだ。


「毛布は二枚。それ以上はありませんね」


若月は白い布手袋を外しながら言った。


二人目の被害者坂口佳奈が住んでいたアパートはまだ事件当時のままにされていた。


本来なら片付けられているはずなのだが、此処が殺害現場だと思われていた為、そのままにされていたのだ。


最初の勘違いが功を奏したか。


「若月、お前一人暮らしだったよな」


「あ、はい。実家は新潟なものですから」


窓が閉め切りにされていた為、嫌な空気が籠る中で若月は答えた。


幾ら事件現場とはいえ、空気の入れ替えくらいすべきだ。


生野は今にも黴が生えそうな壁を見ながらそう思った。


「毛布は何枚持ってる?」


「一枚です。クリーニング出したいんですけど、一枚しかないから出せなくて。もう一枚買おうか考えてるんですけど、本当に必要かどうか考え……あ……」


若月は丁寧に答えている途中で丸い目を見開いた。


「必要だとしても?」


「二枚……までですね」


坂口佳奈のアパートにある毛布は二枚。


だとすると、犯人がこの部屋の毛布を使った可能性は恐ろしく低い。


「一応、土や草などの付着物がないか調べに出そう」


これといったものが出なければ生野の考えは確定される。



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