リアル




「何だ? それ」


生野は口から煙草を外しながら隆の手元を指差した。


薫もそれにつられ、生野の指先に視線を移す。


するとそこには、ブルーのタオルがあった。


「あ、ああ、これ?」


隆はタオルを顔の位置まで持ち上げた。


そのタオルはどう見ても濡れていて、洗濯の途中でここを訪れたようにしか思えなかった。


薫はちらりと時計に目を向けた。


午後三時。


洗濯をするには些か遅い時間にも思える。


「ちょ、いいから、どっちか協力してくんねえかな」


隆はタオルを持ったまま、台所部分へと足を向けた。


パートの時間までそんなにない。


「何の用か知らないけど、手短にね」


薫は腕を組ながら言い、生野に視線を向けた。


生野は俺かよ、と言う顔をしながらも隆に近付いた。



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