リアル




「いや、座っててくれていいよ」


隆は流し台でタオルを濡らしながら言った。


生野はそれに従い、再び椅子に腰を下ろし、煙草の火を消した。


部屋の中の煙草の匂いが軽減される。


薫は隆がしようとしていることの想像もつかずに、彼の様子を見た。


何処か興奮しているような瞳だ。


タオルを持参してまで、一体何をしようとしているのだろう。


「……あ、やっぱり生野さんこっち来て」


水道の蛇口を捻った隆はそう言った。


「はいはい」


生野は少々面倒そうに立ち上がり、隆の隣へと足を運んだ。


「で、そこに膝ついて」


生野は疑問そうな表情を浮かべながらも言われた通りにした。



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