リアル





生野は待ちくたびれていたが、何とかそれを紫煙で紛らわしていた。


目の前を通る学生達は煙草を弄ぶ生野を嫌そうな目で見ていく。


「またそんなとこで吸って」


若月が缶コーヒーを二つ持って来ながら口を尖らせた。


「暇なんだよ」


とはいえ、これから分かるであろう事実を考えると胸が躍る。


いや、この例えはあまりに不謹慎だろうか。


植田美緒らしき姿はまだない。


恐らく今日は助手のバイトが入っているのだろう。


そうなると、早くて出てくるのは七時だ。


今は五時。


かといえ、もっと早く出てこないとは言い切れない。




.
< 201 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop