リアル
生野は待ちくたびれていたが、何とかそれを紫煙で紛らわしていた。
目の前を通る学生達は煙草を弄ぶ生野を嫌そうな目で見ていく。
「またそんなとこで吸って」
若月が缶コーヒーを二つ持って来ながら口を尖らせた。
「暇なんだよ」
とはいえ、これから分かるであろう事実を考えると胸が躍る。
いや、この例えはあまりに不謹慎だろうか。
植田美緒らしき姿はまだない。
恐らく今日は助手のバイトが入っているのだろう。
そうなると、早くて出てくるのは七時だ。
今は五時。
かといえ、もっと早く出てこないとは言い切れない。
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