リアル




「被害者三人の携帯電話の通話履歴を調べてみたが、三人とも見事に自宅以外は出てこなかったよ」


生野はふう、と息を吐きながら言った。


予想通りか。


薫も生野と同じように息を吐いた。


隆が発見した事実から何かを掴めないものかと生野にお願いしたのだが、予想通り何も分からない。


「ただのナンパ、てことはなさそうだけどね」


薫は被害者の顔写真を見ながら言った。


見た目でそんなことを言っているのではない。


そんな偶然があるわけないという意味で言ったのだ。


薫は携帯電話に視線を落とした。


最初にそんなメールを寄越してきたのに、それ以来隆からの連絡はない。


こちらから電話をしても出ない始末だ。


今日はバイトはないと言っていたのに。


薫はまた息を吐いた。


捜査ごっこに疲れたか、それとも嫌気が差したか。



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