リアル





静か過ぎる部屋には外の音だけが響いている。


遠くに聞こえる車のエンジン音。


同じく遠くに聞こえる子供達の笑い声。


今は丁度下校時刻なのだろうか。


ぽつ、ぽつ、とカーペットの上に雫が落ちる。


そしてそれは膝へと変わった。


ジーンズの上に落ちた雫は、そこだけジーンズの色を濃くしていく。


「情けねえ……」


部屋に隆の声が響いた。


ぽつぽつと落ちる涙は、俯いている為頬を伝わらない。


直接膝に落ちていき、ジーンズに何ヵ所もの染みを作る。


見付けたら絶対に殺してやる。


何度も何度もそう誓ってきたはずだった。


心に決めていた。


毎年、命日に父母の墓前にも誓いを立てていた。


なのに、身体は即座には動かなかったのだ。


そうかもしれない。


でも間違っているかもしれない。


いや、あの声を間違えるわけがない。



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