リアル





何度も何度も、あの声を頭の中で繰り返し再生してきた。


唯一の科白だからだ。


両親を殺す最中もあの男は何も言わなかった。


マスクをしていた為、表情すら分からないが、言葉を発することもなかったのだ。


だから、あの声と、あのタトウーだけを脳裏に刻んだ。


それだけが手掛かりだったからだ。


なのに、恐怖心とは違った何かが胸に芽生えたのだ。


殺しちゃ駄目だ。


追い掛けるな。


そう叫ぶ自分が確かにいたのだ。



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