リアル
同じがよかった。
確かにそう願った。
だが、こんなとこで決心を鈍らせたくはなかった。
やはり、親しい人間など作るべきではなかったのだ。
隆は膝に顔を埋めた。
「くっ……」
小さく漏れたその声は静かな部屋では大きく聞こえる。
反響する自分の声に更に気持ちは増した。
どうしてすぐに追い掛けなかったんだ。
そう考えた瞬間、がちゃり、と扉が開く音が耳に届いた。
暗がりの中で、隆は慌てて涙を拭いた。
生野だろうか。
この間の夕飯を作る約束はまだ果たされていないのだ。
.