リアル
「ほお。さすがだな」
寿々子はそう言って唇の端を持ち上げた。
ここまで口づけたいと思わない唇もめずらしいものだな。
生野は寿々子の口元を見ながらそう思った。
「そこまでしたということは、犯人の絞り込みは出来ているんだろうな?」
寿々子はふ、と笑い、生野を睨んだ。
「ま、それはおいおい……」
「馬鹿かっ」
寿々子の怒鳴り声が会議室内に轟いた。
耳をつんざくその声に生野は思わず耳を塞ぎたくなったが、寸でのところで思い止まった。
そんなことをしたら、更に大きな怒鳴り声を浴びせられるに違いない。
「はあ……」
寿々子は盛大な溜め息を怒鳴り声の代わりに生野に浴びせた。
その目は明らかに怒りを含んでいる。
さすがにやり過ぎたか。
生野は自分の行動を思い返した。
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