リアル
しかし、礼状を取るのも手間だし、そもそも許可が下りるようにも思えなかったのだ。
だから、若月に止められながらも独自で捜査したのだ。
「やっぱり、まずかったですよ、ね?」
生野ははは、と笑いを付け足した。
その態度が更に寿々子の怒りを増幅させたらしい。
寿々子はばん、と思い切り机を叩いた。
手よりも机が痛いのではないかと思う程の音に、会議室中の人が振り返った。
「当たり前だろうっ。あんな大きな施設を調べて、何か出たからよかったものの、何も出なかったらどうするつもりだったんだ」
寿々子は今日一番の大声を出した。
勘の鋭い女を信じているので、何も出ない可能性は低いと思いました。
そう口にしたら、こんな女はどんなふうにこの美しい顔を歪めるのだろう。
生野はそう思ったが、その言葉を口にすることはしなかった。
というより、一般人に協力を煽っているなどとは口が割けても言えるわけがないからだ。
「申し訳ありません」
生野はそれだけ言って深く頭を下げた。
そんなことで寿々子の怒りが止むことがないのは知っている。
なので、一応の形だけで頭を下げたのだ。
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