リアル
これも隠しても仕方無いし、隠す必要もない。
隆は職場の人間でもないし、これから関わるつもりもない。
なら、下手に嘘をつくより、本当のことを話して、今すぐに立ち去ってもらいたかったのだ。
「殺されたわ。七年前にね」
こんな話を聞いて、更に深く突っ込んでくる人間もいないだろう。
普通なら、悪い話を聞いてしまったと考え、口を慎むはずだ。
「どんなふうに?」
だが、隆は違った。
更に深く訊いてきたのだ。
薫は彼のあまりの無神経さに腹立たしくなった。
家族を殺された人間の傷を抉る。
そんな行為を理解出来るはずもない。
薫は机を両の掌で思い切り叩いた。
じん、とした痛みが走る。
「……出ていって」
薫は隆を睨み付けながら言った。
こんな奴の顔を、一秒でも長く見ていたくない。
今すぐに姿を消して欲しかった。
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