リアル




生野が到着するまでの間、薫は隆と他愛のない会話を繰り広げた。


世間話とも呼べない代物だが、その話の中で隆が二十三歳であること、今はレンタルビデオ店でアルバイトをしていることが分かった。


隆は一年毎にアルバイトを変え、住みかも更新毎に移っているらしい。


理由ははっきりとは言わなかったが、その様子から親しい人を作りたくないのだというのが窺えた。


誰かと親しくなったとして、その人がまた奪われたら。


そう考えてしまう恐怖は薫にもよく分かる。


しかも、隆の方がその感覚を抱いてからが長い。


だが、隆は意外にもよく喋る青年だった。


同じ境遇の薫には、偽る必要はないと感じているのだろうか。


「お姉さん、こんな話す人だと思わなかった」


隆は薫が淹れた茶を啜りながら言った。


それはこっちの台詞だ、と返そうと思ったのだが、薫は違う言葉を返した。


「ねえ、お姉さん、ていうのやめない? 私、お姉さんて歳じゃないし」


三十四歳という年齢で「お姉さん」と呼ばれるのは少し気恥ずかしい。


「じゃ、何て呼べばいい?」


隆はきょとんとしたような表情を浮かべた。


それは歳より幼く見えるもので可愛らしい。


「適当でいいわよ。雪穂でも、薫でも」


長い間、こんな会話をしたことはなかった。


職場では当たり障りなく話し、近所の人とは全く会話を交わさない。


呼び方を指示することもなければ、呼び掛けられることもない。


それは何と寂しい生活なのだろう。


「うん、じゃあ薫さんで」


隆は少し悩んだ後にそう言った。



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