リアル
――思い知らせてやればいい。そう言われたんだ。
あの男は死の間際、その科白を遺していった。
その科白は薫の頭の中からずっと消えないのだ。
誰がそんなことを。
落ちていく背中を見詰めながら、ぼんやりと思った。
そして、今はその正体を掴みたい。
生野が薫に事件の情報を持ってくるのはその理由からだった。
もしかしたら、その正体と関係あるかもしれない。
そう考え、若い女性が殺される事件の情報を教えてくれるのだ。
「何か進展あったの?」
薫は生野の前にカップを置きながら訊ねた。
「その前に、一ヶ月前の事件は知ってるか?」
生野はカップに手を伸ばしながら、どちらにともなく訊いた。
その言葉に、薫は首を横に振り、隆は反対に頷いた。
「事件について知りたいなら、テレビを観るか、新聞をとってくれよ」
生野は溜め息混じりに言いながら、煙草を一本取り出した。
テレビも観ないし、新聞もとらない理由は出来るだけ殺人事件の話を耳に入れたくないからだ。
知りたい気持ちは勿論あるが、毎日のように殺人の話を耳に入れていたら怒りで精神がもたない。
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