リアル
だから、テレビも観なければ、新聞も読まないのだ。
「一ヶ月前に、此処からそう離れてない場所で同じような死体遺棄の事件があったんだよ。被害者は清原仁美という名でフリーター。近くの川原で発見されてる」
生野は言い終わった後、煙草を一口吸った。
「死因は窒息死だ。因みに今回は溺死」
窒息死も溺死も似たようなものだ。
「類似点はどちらにも抵抗の痕が見られないこと。一人目は口を塞がれたような痕跡もない」
生野の話を聞き、薫は窒息死させる方法を幾つか頭に思い浮かべた。
口と鼻を布のようなもので塞ぐのが一番多いパターンであるが、これでは時間がかなり掛かり、抵抗した痕がないのは可笑しい。
睡眠薬でも飲ませていれば話は別だが、それなら敢えて抵抗した痕がないことを言わずに、体内から睡眠薬の類が発見された、と言うだろう。
首を絞めて殺害するのも窒息死にはなるが、これは絞殺という名で呼ばれるので違う。
溺死をさせる場合も、抵抗した痕跡がないのは不自然だ。
「二人目の殺害現場は?」
「自宅だと見られてる。アパートなんだが、洗面台に気管や肺から見付かったのと同じ成分の海水が見付かっている」
となると、犯人は洗面台に被害者の顔を押し付け、溺死させたということだ。
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