リアル
「洗面台の周りにも海水が零れた痕があった。ただの水じゃないから、分かりやすくて助かったよ」
生野は紫煙を燻らせながら説明をした。
「一人目は何処で殺害されたの?」
薫と生野が話を続けていく中、隆は必死にそれを聞き取ろうとするが、いまいちついていけない様子だ。
「それはまだ不明だ。住まいは実家で、殺害されたと思われる当日は帰ってきていない。今までそんなことなかったら、家族は心配していたらしい」
そして、帰ってきた娘は冷たくなっていた。
薫はその時の家族の心境を考え、身震いした。
そんな恐怖は出来れば皆、一生味わいたくないものだ。
「捨てられていたのは自宅近く?」
「電車で二駅。近く、とは言えないな」
「その子の行動範囲内?」
「たまに買い物では行くらしい」
生野はまた新しい煙草に火を点けた。
窓を開けていない部屋は煙草の煙と独特の匂いが充満していて、頭が痛くなってくる。
薫は寒いのを承知で、換気の為に窓を開けた。
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