リアル
「交友関係に接点は?」
窓をあけるなり、冬特有の冷たい風が流れ込んできた。
暖房をつけても無意味かと悩みながら生野に次の質問をした。
「いや、特に。ただ、二人目の被害者は、一人目の被害者のアルバイト先の常連だった」
「どんな店?」
「本屋。二人目の職場がそこから近くて、よく来ていたらしい」
それを接点と呼べるかどうかは微妙なところだ。
アルバイト店員と客。
会話を交わしているかどうかも分からない。
「あと、不思議なことが一つ」
生野は言いながら、人差し指を立てた。
体格同様にひょろりとした指だ。
「何?」
薫は身を乗り出すようにして続きを催促した。
「二人目の被害者の顔には、あまり海水がついていなかった。口の周りに飛び散ったように少しだけだったんだよ」
薫はその話に目を見開いた。
そんなことは有り得ない。
「何が不思議なんだよ」
それまでずっと黙っていた隆がようやく口を開いた。
二人の話の意味を理解出来ていないらしい。
「あのね、溺死によくあるパターンは……」
薫は一旦そこで言葉を止めた。
「ちよっと来て」
そして、隆の腕を掴み、立ち上がらせた。
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