リアル
早朝、だんだん、と扉を叩かれる音で薫は目を覚ました。
新聞の勧誘か何かだろう、と薫はそれを無視し、布団を頭から被った。
前日はパートがあった為、布団に入ってからまだそんなに時間は経っていない。
居留守を使って寝ようと試みたが、戸を叩く音は止まらない。
苛々しながら口元だけを布団で覆う。
だが、無意識に鼻まで掛けていたらしく、息苦しさを感じた。
「俺だよ、真瀬だっ」
扉の向こうから、隆の声が聞こえた。
薫は仕方なしにベッドから這い出た。
そして寝間着のまま厚手のカーディガンを羽織り、玄関に近付いた。
「おーい」
それに気付かない隆は声を出し続ける。
薫は眉間に皺を寄せながら鍵を開けた。
眠気はまだ脳を支配している。
「朝から何」
薫は扉を開けながら、低い声で言った。
「いや、何ってわけじゃねえんだけど……」
薫の機嫌が悪いのを察知したのか、隆は声のボリュームを下げた。
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