リアル




薫は陽の眩しさに目を細めた。


その表情を自分の発言で更に機嫌が悪くなったのかと勘違いしたらしい隆は、出直す、とだけ言い、薫から離れようとした。


その時、かちゃり、という音がして、隣の部屋の扉が開いた。


噂好きの太った中年女は、薫と隆をあからさまにじろじろと見た。


不躾な視線は、遠慮という言葉を知らないようだ。


「いいから入って」


薫は女の視線を無視して、隆を招き入れた。


すると女は更に好奇の視線を寄越してきた。


「お邪魔します」


隆は女に一瞥くれただけで、部屋へと足を踏み入れた。


どうせ、薫が若い男をたぶらかしているとでも思っているのだろう。


薫はそう思いながら、扉を閉めた。


以前の隆の話が本当なら、今日中に此処のアパートの住人は薫と隆ができている、という話をあの女から聞くだろう。


どう思われようが別に構わないが、あれこれないことを言われるのに関しては少々腹が立つ。


だが別段意見することでもないので放っておくことにした。



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