リアル




「頭で考えてるだけより、書き出したほうが整理出来るかと思ってさ」


隆はボールペンを置き、いただきます、と言ってからコーヒーカップに手を伸ばした。


見た目よりは利口、いや馬鹿じゃないのかもしれない。


薫はコーヒーを啜る隆を見ながらそう思った。


茶色く長い髪は今日は結わかれていない為、骨格が隠れた顔立ちは女に見えなくもない。


だがどう見ても賢いようには見えない。


鬱陶しそうな髪形のせいだろうか。


「それはそうね」


薫の言葉に隆の顔が心なしか嬉しそうに緩んだように思えた。


「客観的に見れるし、頭でだけでは気付けなかったことに気付けるかも」


薫は言いながらチラシを手にした。


とはいえ、何か新しい事実が見えてくる兆しはない。


不可解さが増すばかりだ。


抵抗した痕がないこと。


その理由が気になる。



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