リアル
「お待たせしました」
京華は蒔田がいつも注文する、スペシャルブレンドコーヒーを彼の前に置いた。
蒔田はいつもこれにミルクを少量だけ入れて飲むのだ。
「彼氏と喧嘩?」
蒔田は銀色のスプーンでコーヒーをかき回しながら京華に尋ねてきた。
「え? ああ、違いますよ。強がらなきゃよかったな、て思ってたんです」
京華は顔の前で手を振りながら答えた。
そう、最初に物分かりのいい振りなどしなければよかったのだ。
私のことは放っておいていいから、捜査に集中して。
そういう態度を取ってしまったのは紛れもなく自分だ。
嫌われたくなかった。
鬱陶しい、面倒臭い女だと思われたくなかった。
大人の女だと思われたかった。
そうした強がりから、今の関係が出来上がってしまったのは重々承知している。
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