リアル
「……警察だ」
下手に隠すほうがややこしくなる。
生野はそう考え、素直に答えた。
「警察、ですか?」
青年は目を通常の状態に戻した。
やはり鋭い目だ。
「ああ」
生野は手渡されたライターと煙草を胸ポケットに仕舞った。
「うちの大学で何か?」
青年は驚きを隠せない、といった表情を作る。
それもそうだろう。
彼は先程、「うちの」と確かに言った。
となると彼はここの学生か、歯科医師のどちらかということになるだろう。
それなら、自分の大学に警察が用事があるとなれば、誰だって驚くはずだ。
「大したことじゃないんだ」
生野は適当に答えた。
まさか、殺人事件に関係しているとは口が割けても言えない。
正式な捜査であるならば話は別なのだが。
「英治君?」
生野と青年の視線が一瞬交差した瞬間、女の声がした。
生野がそちらに顔を向けると同時に、青年も同じ方向に目を向けた。
英治とは彼の名前らしい。
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