リアル
「話を聞き出すたって、どうするんだよ」
ばたん、と扉が閉まると同時に隆は声を出した。
薫は生野の背を見送ることもせずに台所部分に足を運んでいる。
「取り敢えず、やれることをやってみるしかないわね」
薫の答えに、隆は少しだけ苛立ちを覚えた。
いや、薫の言葉に、ではない。
生野の無理な頼みにだろう。
何故、きちんとした捜査に加えてもらわないのかは隆には分からない。
警察なりの理由があるのかもしれない。
実際にこうして事件を自分で調べられるのは願ってもないことで嬉しくはある。
だが、無理なことをするとなれば話は別だ。
確かに、自分の足で真相には近付きたいが、捜査の進行状況が耳に入るだけでもそれは嬉しい。
俺は何を苛立っているんだ。
隆は自分の胸に言い、気を落ち着かせた。
それと同時に、薫が目の前にコーヒーを置いた。
「明日、早速行きましょう」
薫はコーヒーを啜る前に言った。
隆にはそれを承知するしか術はないのだ。
願ってもない機会を、一時の苛立ちで無駄にしてしまっては元も子もない。
事件の真相に自ら近付けるのだ。
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