リアル
動かない手足に気付いたのは、少し経ってからだった。
元より、それは記憶が始まってからだ。
閉められたカーテンの隙間から差し込む夕日で、夕方だということだけは判断出来た。
ということは、小学校から帰ってきているのだが、その、小学校にいた間の記憶もなければ、帰り道の記憶もない。
そして、家に帰ってきて、何故、そのような状態になっているのかも、何もかも分からないのだ。
目の前には、ダイニングの椅子に縛り付けられた両親の姿があった。
手を後ろで縛られ、足は椅子の足に縛り付けられている。
タオルで猿轡をされ、うう、と低い唸り声を必死に上げていた。
どうしたの、と尋ねようとしたその時、自分の口にもタオルが巻かれていることに気付いた。
小学校の口はタオルを入れるのには小さかったのか、猿轡の状態ではなく、ただタオルが巻かれている。
異変に気付き、身体を動かそうとした瞬間、自分の身体も両親と同じく椅子に固定されていることに気付いた。
必死に手足を動かすも、縄がほどける様子はなかった。
何だ、これは。
頭の中にあったのは恐怖ではなく、不可解さだった。
夢でも見ているのだろうか。
でなければ、こんなことがあるはずがない。
お仕置きされるようなことはしていないし、例えそうだとしても両親まで同じ目に遭っているのは可笑しい。
次の瞬間、ぴ、と何かが顔に飛んできた。
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