∮ファースト・ラブ∮
あたしは全部の力を振り絞って麻生先輩の胸を突き飛ばした。
その振動であたしの体が後ろへとよろめく。
ガタン!!
「久遠!?」
「いっ……て!!」
麻生先輩の体は後ろにある机へとぶつけた。
一緒にいた女の人は床へと倒れた麻生先輩へと向かい、机の角で打ち付けた麻生先輩の背中を擦っている。
とても…………仲がよさそうに………………。
「…………っつ!!」
あたしは視聴覚室から……麻生先輩から逃げ出した。
…………ほんとうは知っていた。
こうなることはわかっていた。
麻生先輩は紀美子先輩に呼び出された日から、あたしにキスさえもしなくなった。
いずれは飽きられることくらい……知っていた。
でも……でも……もしかしたら、そうじゃなくて、あたしを好きになってくれるかもって思っていた。
今まで見たことのない笑い方をしてくれたから…………。
抱きしめて……大声で笑ってくれたから……。
そんなの……ないことなのに…………。
だったら思わせぶりなこと、しないでほしかった。
側にさえも置いてくれないのなら、キスなんて、してほしくなかった。
こんなの……残酷すぎるよ…………。