∮ファースト・ラブ∮

ううん。

違う。

だって、だってあたしは……そりゃ、苦しいけど。

悲しいけど。


でも、やっぱり、恋を知ってよかったと思う。


だって、麻生先輩だけだから。


あたし……人魚でよかったと思えたの、麻生先輩に出会った時だったから。



嬉しかったの。




…………人間じゃないあたしごと、全部、受け入れてもらったみたいで、嬉しかった……。



「うわわ!!

ごめん!!

ごめんな!!


泣かないで!!

うおおおおお!!

オレが泣かせたんだよな!!」



気がつけば、視界はぼやけていた。

目の前で葛野先輩が両手をあらゆるところに向けてアタフタしていた。


なんだろう。

葛野先輩って、面白い。



あは…………。


「あはははは…………」

胸は少し痛むけど、なんだろう。

葛野先輩といると、あたたかくなるの。



「せんぱ!!

おかし!!

あはははは!!!」


泣きながら笑うあたしの方が変だ。


なのに、葛野先輩は、「そっか」と言ってあたしの頭をくしゃりと掴む。


撫でてくれているみたい。

撫で方、乱暴だけど…………。



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